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2009年12月 9日 (水)

労災法:業務災害と通勤災害

労災保険は「業務上or通勤上の負傷や疾病に対して保険給付を行なう」ということは書きました。
ということは、その怪我や病気が、本当に仕事(通勤)が理由なのかどうかを判断する必要があります。
 
 
業務上の怪我というのはわりと分かりやすいですよね。業務時間中に仕事が原因で怪我した場合は、基本的には業務災害となります。

では、業務時間中にサボっていて事故にあったら? 休憩時間中の事故は? 出張中の事故は? ・・・
一口に業務災害といっても色んなケースが考えられます。条文にすべてのパターンを列挙するなんて不可能ですよね。

ではどうすればいいんでしょうか?

一般的に業務災害に該当するかどうかは、業務遂行性(事業者の支配下にある状態で命じられた業務に従事しようとする意思行動性)と業務起因性(業務に内在している危険有害性が現実化したと経験則上認められること)の両方を充たす必要があります。

簡単に言うと、業務時間中の事故であって、しかもその仕事をしていたらそんな事故も起こりえるだろうという両方が必要だということです。
 
 
一方、業務上の疾病とされるものには次の2パターンがあります。災害性疾病職業性疾病です。

災害性疾病は「突発性の事故や有害労働によって疾病になったもの」と定義されています。有毒ガスを吸って気管支炎になったとか、放射能に被爆して白血病になったとか、、、
業務上災害との因果関係があれば、業務上の疾病と認められます。

職業性疾病というのは一般的に職業病といわれるような疾病です。
労基法施行規則において「粉じんが飛散する場所における業務→じん肺」とか「石綿にさらされる業務→中皮腫や肺がん」のように、仕事と病名の関連性が8パターン例示されています。
ただし、労基法施行規則の最後(第9号)には「その他業務に起因することの明らかな疾病」と規定されているので、上記に例示されていない疾病であったとしても、業務上災害と認定される場合もあります。

出題例として、「労基法施行規則に該当しなければ業務上疾病ではない」というのは○ですが、「労基法施行規則に例示されている病名でなければ業務上疾病ではない」は×ですからご注意を。
 
 
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通勤災害と認められるためには、「通勤と災害の間に相当因果関係があること」と、「災害が通勤の途上で発生したこと」の両方を充たすこととされています。
なお両方を充たしたとしても業務の性質を有するものは通勤災害には認められません。
例えば、出張するために駅へ直行している途中の事故や、休日に緊急事態で呼び出されて出社する途中の事故なんかは、通勤途中ではあっても業務災害となります。

通勤と災害との間に相当因果関係が認められることとは、(業務災害でいうところの業務起因性と同じように)通勤に通常ともなう危険が具体化した場合を指しているので、例え通勤途上の災害であっても、被災者の故意やけんかによる負傷・疾病は通勤災害とは認められません。

なお、通勤による疾病の範囲は、労災保険法施行規則で「通勤による負傷に起因する疾病、その他通勤に起因することの明らかな疾病とする」
と規定されています。
労基法施行規則ではありません。(労基法の災害補償には通勤災害はないから。)また、具体的な病名は例示されていません。
 
 
ところで通勤の定義は労災法7条2項で次のように定められています。

通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により往復する行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
 
1.住居と就業の場所との間の往復
 2.厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
 3.第1号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)


1.はみなさんが毎日行なっている通勤のことです。
2.は複数の会社に勤めている人が、A社からB社へ移動する場合などをいいます。省令で定める就業の場所→他の就業の場所は○ですけど、その逆(他の場所→省令で定める場所)は×ですからね。
3.は単身赴任している人が、会社⇔自宅⇔実家に移動する時の、自宅⇔実家の移動を言います。こちらは逆でもOKです。

なお、会社に届け出ているのと違う方法で通勤していて事故にあった場合は通勤災害にはならないという話を聞くこともありますが、これは間違いです。例えば電車通勤で届け出ている人が実は自転車や車で通勤していたとしても、それだけで「合理的な方法」ではないとはされません。
 
 
最後に、途中で通勤を逸脱(中断)した場合の取扱いです。基本的には逸脱(中断)した後は(たとえ本来の通勤経路に戻ったとしても)通勤とは認められません。会社帰りに一杯飲みに寄った場合、帰宅経路を逸脱した瞬間から通勤ではなくなっちゃいますからね。
ただし、その中断が日常生活上必要な行為(日用品の購入や病院に寄るなど)である場合や、中断にもならないささいな行為(途中でトイレに行ったりジュースを買ったりなど)であれば、逸脱(中断)の間を除いて、その後の移動は通勤になります。
(この場合でも逸脱(中断)の間は認められません。)
 
 
業務災害・通勤災害に認められるかどうかの具体例は判例や通達によって決まりますが、そのすべてを覚えることなんか出来っこありません。
(過去問題やテキストにはいくつかの事例は載っていますが、実際の判例はその何百倍もありますから。)
テキストを丸暗記するのではなく、、業務災害(通勤災害)の趣旨を理解するようにしてくださいね。そうすれば、本試験で見たことがない判例が出たとしてもきっと解けるはずですから
 
 
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